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コ2【kotsu】寄稿レポート 第11回世界大会直前!塚本徳臣師範インタビュー01「勝つための条件」

来る10月30日、11月1日、東京体育館で行われる、第11回全世界空手道選手権大会(主催:全世界空手道選手権大会実行委員会、NPO法人 全世界空手道連盟 新極真会)。その大会を目前に、新極真会塚本道場代表・塚本徳臣師範のインタビューをコ2【kotsu】編集部宛てに頂くことができた。 塚本師範といえば現役時代は“マッハ蹴り”の異名を持つ名選手として知られ、21歳で優勝した世界大会をはじめ、全日本選手権を5度、世界大会を2度制した伝説的王者だ。また現役時代から研究熱心で知られ、伊藤式胴体力を含む様々な身体開発や独自の稽古哲学を持ち、心身開発に取り組んだことでも知られている。

コ2【kotsu】では、そんな塚本師範が、多年に渡り第一線で活躍してきたからこそ見えてきた「勝つための条件」について数回に渡ってご紹介したい。

初回は、まず今週末に迫った世界大会を中心にお話しを伺った。

コ2【kotsu】寄稿レポート

第11回世界大会直前! 塚本徳臣師範インタビュー01

~「勝つための条件」~ 

取材・文・写真●林田哲臣

動画提供●NPO法人 全世界空手道連盟 新極真会

最高峰の大会で勝つための条件とはなにか?

 全世界空手道選手権大会は新極真会において最高峰の大会です。

 これ以上が存在しない舞台です。ボクシングでいえばラスベガスのMGMでの世界タイトルマッチのような舞台ですね。そして他では見られない武道らしさを残しているところが無差別の1階級のみのトーナメントであるところです。体格も国も関係なく164人の選手がたったひとつのトーナメントで戦う。これは他の武道格闘技では見られないところでしょう。

 この中で勝ち上がるのは本当に難しいことです。出場選手は国を代表していますから強いのは当たり前。その中で勝ち上がるのは心が綺麗で勝ち上がる背景を生み出して運を味方にできる選手です。

 選手が勝つための努力をするのは当たり前。そのためトーナメントは運が占める部分が高い。だからこそ運を引き寄せ神がかる背景作りをしてきたかどうかが重要です。普段の生活から心をしっかりコントロールして言動にも気をつけて、“俺が俺が”というのではなく“しっかり感謝の気持ち”を持って、誰のために勝つのかという筋道を作っていなければいけません。

塚本師範現役時代最後の一本勝ちとなった第10回世界大会準決勝戦

準備ができていれば根性はいらない

 自分の場合は21歳で出場した第6回世界大会で優勝し、それから調子に乗って失敗を重ねて長く優勝から遠ざかりました。

 30歳を過ぎた頃にようやく人間は人のためでなければ生きていけず、支えてくれる道場生や周囲の人たちみんなのために勝ちたいという正しい気持ちがなければ神様は味方してくれないし、技の研究での良い気づきもないということがわかってきました。この心の部分を意識して試合に臨み始めてから様々な良い気づきを受け取れるようになり、また優勝ができるようになりました。

 しっかり試合への準備された者同士の試合は90パーセントくらいが心で勝敗が決まります。この心はいわゆる根性ではありません。試合場は根性を出すところではありません。

しっかり準備された状態では根性はいりません。感じたらただ動くだけです。

 天からのメッセージが受けやすい状態になり、地球とも相手とも一体化して宇宙と同化しているような感覚になるからこそ、相手の動きも読めるし、技のタイミングもわかります。もっと言えば”わかる”というより神様に教えてもらったことに沿って素直に体を動かしているだけという感覚です。だから根性というものは必要ではありませんし、根性が必要なのはまだその域に達してないということではないでしょうか。 根性が必要なのは稽古です。稽古の中では苦しい思いの中で自分を奮い立たせて動かなければなりません。しかし試合ではただ感じて動くだけです。やるべきことをやることに集中するです。

現在のトップ選手のキャリアはムエタイ選手以上!?

 今回の日本代表選は20代前半の選手が多い中、主将の島本雄二(試合インタビュー)や山本和也(試合インタビュー)をはじめ、この心の部分がしっかりできています。彼らが若くしてこのようなことをしっかり身につけている理由のひとつは、20歳の頃にはもう15年以上の選手キャリアがあるからです。  昔は早くて中学高校から、遅くて大学生から空手を始めてトップ選手になっていますが、現在ではトップ選手のほとんどが早くて幼稚園児、遅くても小学生前半に空手を始めています。

 ムエタイの選手も子供の頃から試合をして強くなりますが、今の新極真会選手は彼ら以上の試合経験があると思います。まず1日にやる試合数が多い。自分の子供の場合も9月だけで最初の週に2試合、次の週に3試合、その翌週に3試合、さらにその翌週に3試合しています。これは特別なことではありません。今活躍している選手の多くは幼稚園児の頃からこのようなペースで経験を積んでいます。

 昔はフルコンタクト空手などの打撃系の武道格闘技は危ないという理由で子供にはやらせませんでしたが今は防具も発達して安全に試合ができるようになっているため、フルコンタクトの試合でありながらこのようなペースで試合ができます。そして現在、少年部の大会は非常に盛んで毎週全国各地で大会が開催されています。

才能ではない。努力と経験がすべて

 このように子供達は常に修羅場に身を置く環境で稽古しています。だから武術の面では、どう逃げればいいのか、どこで捌くのか、どこで当てるかという感覚を体で理解しています。そしてどこで畳み掛けなければならないのかという競技的なこともわかっています。したがって競技と武術の両方の面を体現できていると思います。  その中で感情を出すことなくきちんと相手に礼をすることや我慢することなど心の面の稽古もしっかり積んできた世代の子たちが成長して今回の世界大会の代表選手になっています。

 少年部の稽古では技術以上に礼儀礼節などの心の面の指導を重視していますが、今の選手たちはそれぞれの先生からそういったことを幼稚園児の頃から教えられ、二十歳そこそこで心から理解しています。その経験があるからこそ、この若さでこういう大事なことに気がつき、納得できるのかもしれません。まだ若い選手たちですが尊敬する部分がすごく多いです。

 そして彼らは血の滲むような努力を15年以上重ねて現在の強さを培ってきました。そこに才能が入り込む余地はありません。努力と経験、これがすべてです。これは空手に限らずそうではないでしょうか。一流選手と呼ばれる人は子供の頃から努力と経験を重ねていると思います。

勝つことは必須、されど……

 今回は日本代表選手団コーチとしてまた特別演武の演武者として世界大会に参加します。  コーチの立場としては、選手はまず勝ちにこだわって欲しい。負けないこと、勝つことそれが武道。いい試合をしましたが負けましたでは、戦国時代なら領地はすべて奪われ家族は一人残らず磔です。武士の時代は負ける=死です。  だから武道家はまず勝たなければならない。生き方としては武士道は死ぬことを見つけることかもしれませんが、勝負は勝つことが一番大事です。だからコーチとして選手に言うことは「必ず勝って欲しい」ということです。 

 ただしただ勝ちたいがために我を押し通すのではなく、いつも応援してくれる道場生、いつも稽古や試合で迷惑をかけている家族や両親を喜ばせ恩返しをしたい、試合を見に来てくれた人たちに「空手すごかったなあ。だけど強いだけじゃなくて礼儀正しいな」と感じてもらうために、自分のためではなくみんなのために一生懸命試合するという意識を持ち続けてもらいたい。また、そうでなければ勝ちあがれないでしょう。やはり心という道ありきだと思います。

注目の世界大会は、来る10月31日〜11月1日、東京体育館で行われる。 大会動画はこちらから!

 この記事を読んで世界大会に興味を持ってくださった方は、まず日本選手団は幼稚園から直接打撃の空手の試合を戦い抜いてきた選手たちであるということを知って観戦してください。体格で劣る彼らが無差別のトーナメントで海外選手に対してどう戦うのかを見てください。彼らは幼稚園児の頃からこの世界大会の舞台に立つことを夢見て戦ってきた選手たちです。彼らの夢の舞台での戦いを見届けてください。

(塚本徳臣 第一回 了)

【世界大会情報】 東日本大震災復興支援チャリティー/骨髄バンクチャリティー

第11回オープントーナメント全世界空手道選手権大会

The 11th World Karate Championship

日時:10月31日、11月1日

場所:東京体育館

主催:全世界空手道選手権大会実行委員会、NPO法人 全世界空手道連盟 新極真会

後援:(公財)日本骨髄バンク/厚生労働省/文部科学省/国土交通省/外務省/東京都/FM東京/Jスポーツ

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(写真提供●林田哲臣)

●塚本徳臣(Norichika Tsukamoto)

1974年2月4日生まれ長崎県出身新極真会世田谷杉並支部・支部長。 小学生で極真会館長崎支部に入門。高校卒業後上京して城南支部に移籍する。第6回全世界空手道選手権大会で優勝、その後、33連勝の記録を成し遂げた。独特な空手理論を持ち次々と新技、新戦術を開発して一本勝ちを収めたことから空手革命家と呼ばれた。2011年の第10回世界大会で引退。現在は自らの支部で指導をおこないながら、日本代表選手団のコーチを務める。

【主な戦績】 第15回全日本ウエイト制空手道選手権大会 重量級 優勝 第21回全日本ウエイト制空手道選手権大会 重量級 優勝

第28回全日本空手道選手権大会 優勝 第29回全日本空手道選手権大会 優勝 第38回全日本空手道選手権大会 優勝 第41回全日本空手道選手権大会 優勝 第42回全日本空手道選手権大会 優勝

第1回カラテワールドカップ 重量級 優勝

第6回全世界空手道選手権大会 優勝 第10回全世界空手道選手権大会 優勝

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