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簡単!ニコニコタッチセラピー体験。 第八回「肩」

武術家であり体の専門家である河野智聖先生に、皮膚を軽く撫でるだけで誰でもすぐに使える身体調整法“ニコニコタッチセラピー”をご紹介頂きます。第八回目の今回は肩コリです。

ある日のニコニコタッチセラピー講座での出来事。

講座を受ける女性たちにまじって70歳代のおばあさんが見学にきていました。

聞けば娘が講座を受ける間待っていたいとのことです。

そのおばあさんは腰痛が大変で、歩くのも不自由で講座がおわったら娘に車で病院に送ってもらうことになっていました。

そこで、「せっかくですから、モデルになって下さい」とお願いして、講座でお尻・肩甲骨・頭にニコニコタッチをおこなうと、曲がった背筋がスッキリし、「痛みが取れた!」と満面の笑顔となり、そのままご自宅へお帰りになりました。

ここで私がやったのはただ触るだけ。頑張って揉んだり、押したりせずに皮膚の流れにそってタッチングするだけで元気になる、そんなニコニコタッチをこの連載では紹介していきます。

簡単!ニコニコタッチセラピー体験。

第八回 「肩へのニコニコタッチ」

文●河野智聖

肩コリになる三つの原因

 肩コリの三つの原因 整体では、肩こりの原因は三つあるといわれています。

 ひとつは「腕の使い過ぎ」。

 ふたつめは「食べ過ぎです」。

 そして最後は「目の使い過ぎ」です。

 こうしたことが肩こりや腕の痛みの原因です。 その他に四十肩・五十肩と呼ばれるものは、骨盤の動きと関係しています。

 今回はニコニコタッチを説明する前に、これを順におってまずは整体的に解説していきましょう。

腕の使い過ぎ

  これは連想できるのではないでしょうか? 腕を使いすぎることで腕や肩がくたびれてしまい、指先→手首→肘→肩と連動して、関節や筋肉が緊張して固まってくるのです。

 「腕の使い過ぎ……」というと、子供の頃に通っていた散髪屋に成人してから行った時のことを思い出します。

 久しぶりに会う理髪師のおじさんは白髪が増えていました。

 驚いたのは右の手首がハサミを持つ形に曲がってしまっていたことです。

 毎日、毎日ハサミを持って人の髪を切り続けているうちに、手首が固まってしまったのでしょう。おそらく腱鞘炎に悩まされた時期もあったと思いますが、それでも痛みを押してハサミを使い続けた結果、変形してしまったのだと思います。

 整体的に観ると、日々の疲れを取って変形しない方が健康的ではあります。しかし、ハサミを持つ形に曲がってしまった手首を観て、プロの凄みを感じてました。

 仕事やスポーツで腕を使い過ぎて、腕が疲れたまま放っておくと、やがて肩を動かすと痛みが生じるようになります。それを避けるためにも、疲れはこまめに取っておく必要があります。

 効果的なのは後で紹介するニコニコタッチと併用して、肘を温めておくと良いでしょう。

 「肘湯」と呼ばれるものですが方法は簡単です。

 お風呂の桶か洗面台に、通常のお風呂で入るよりも2度ほど高めのお湯を貯め、10分ほど肘を浸けておくと腕の緊張がとれて肩も楽になってきます。

食べ過ぎによる肩こり

 「食べ過ぎで肩こり?」

 と思う方もいらっしゃるでしょうが、実は肩こりの原因として一番多いのがこの「食べ過ぎ」だと思っています。

 野口晴哉先生は著書『体運動の構造』の中で、食べることにより生じる変動に多くのページを割いて述べられており、その中でも「食べることが肩こり、腰痛、内臓疾患などの原因である」と書かれています。

 本来、人間の体の構造は、少量の食べ物でも動けるように作られています。それが、戦後になってから体を動かす肉体労働が減る一方、体を動かさない事務労働の割合が高い社会となりました。

 そのためにエネルギーの消費量と食事の供給量のバランスが釣り合わなくなってしまい、運動量は減少しているにも関わらず食べる量が増えてしまった栄養過剰が様々な病気を作り出しているのです。

 整体的な体の反応としては、食べ過ぎによる胃袋や肝臓の疲れは、腕に直結してきます。また、食べ物の栄養価が高すぎて、消化が追いつかなくなると右肩が凝ります。そして、食べ物の量が多すぎると左肩が凝ります。

 こうした食べ過ぎによる体の不調には、ニコニコタッチと併用して「合谷(ごうこく)」のツボを押さえておくとよいでしょう。

 「合谷」とは親指と人差し指の間のツボで、食べ過ぎるとここが分厚くなってきます。左右押さえて厚い方が薄くなるまで押さえてみましょう。(せんねん灸HPより)

 押してみて手の厚さが分厚く感じる方は、しばらく押さえていると薄くなってきます。

目の使い過ぎ

 肩こりの原因が目の使い過ぎというのも、なかなか連想しづらいかもしれませんね。

 やや専門的になるのですが、目の急処は胸椎の1番2番3番の指三本外あたりになります。目を使い過ぎると、ここの急処が固くなるため、実際には肩は凝っていないにも関わらず、本人は凝っているように感じるのです。 また、姿勢もおおいに関係します。

 最近は「スマホネック」という言葉があるようですが、スマホ(スマートフォン)を覗き込むような姿勢を長く続けていると首や肩に負担をかけてしまいます。

 IT化が進み、PCの画面やスマホを見る時間が長くなった現在、日常的に肩が、顔より前に突き出ている姿勢をとる方が多くなってきています。この姿勢は、肺を圧迫しているともいえるので、深い呼吸で、新鮮な酸素を取り込めません。

 そのため頭にも酸素が回らないため、頭も働きづらくなります。その結果、イライラとストレスの溜まりやすい状態となります。また、肩峰(けんほう 肩の一番外端)の下あたりに、衣服の皺がよってくるため洋服の劣化も早いです。

 目の疲れを取るには、肩のニコニコタッチと併用して、「目の温湿布」と「首の温湿布」をお勧めします。 やり方は簡単です。蒸しタオルで目と首を温めるだけです。

 私が整体道場へ通っていた頃、道場生は皆、喫茶店で温かいおしぼりが出てくると蒸しタオルで目を温め、首を温め、それから手を拭いたのをよく覚えています。これはタオルが温かいうちに目や首を温めるのがポイントですので、恥ずかしがらずに是非試してみてください。

股関節と肩関節の連動

 肩に関してはもうひとつ、股関節と連動しているということも重要です。

 「肩が痛くなった」「あがらなくなった」という時に、「四十肩、五十肩」と言いますね? おかしなネーミングですが、実は意味深くもあります。

 改めて、なぜ四十肩•五十肩というのでしょう?

 実は股関節の動きと連動しているからです。 四十歳から五十歳というのは女性でいうと閉経の時期です。もちろん男性には閉経はありませんが、女性と同じく骨盤が動きます。そして骨盤が動くことで股関節も動くのです。

 ではなぜ、股関節の動きが肩関節にも影響するのでしょう?

 体には“構造が似ている場所が共鳴する”という現象があります。これを相似象(そうじしょう 風景や形から相似の関係にあるものを探していく方法)と呼びます。

 例えば骨盤は長細いハート型です。同様に後頭部は逆ハート型になっています。そのため後頭部をぶつけると骨盤が狂ったり、その逆に骨盤をぶつけると後頭部が狂ったりという現象を起こるのです。

 余談ですが、そうしたことから整体では、生理中に頭をいじると骨盤に影響するので、生理中は頭を洗ったり、パーマをかけたりしないように言われています。

 こう説明すると「四十肩・五十肩」と呼ばれる意味が分かりますね。 これは自然現象ですから、無理に直そうとせずに、骨盤がすみやかに変動するようにしてあげると自然におさまってきます。

 骨盤がスムーズに変動するためには、

  • 目を酷使しない。

  • 食べ過ぎに注意する。

  • 冷えに気をつけること。

 です。

 それではいよいよ肩のニコニコタッチの実技に入っていきましょう。

肩のニコニコタッチ

 今回ご紹介するのは、肩関節周辺の可動性を良くし、姿勢を改善するニコニコタッチです。 まずニコニコタッチする方は、施術をする人の斜め後ろにポジションをとります。 片手で、肩甲骨のあたりを軽く触れます。触れる前に声を掛けてからおこなうと、ニコニコタッチされる側の人が安心します。

 反対の掌で肩関節が自然に後ろに反れるニコニコタッチをしていきます。

(ニコニコタッチされる側から見ると、自分の肩が後ろに行く方向です)

 セルフの場合も同じです。

 タッチする側は、机の上に置いた薄い紙を移動させるくらいの力加減で皮膚の表面をニコニコタッチしていきます。皮膚下の筋肉まで押し込まないように注意しましょう。

 肩関節は、腕側の骨(上腕骨骨頭)と肩甲骨で構成される関節で、腕側の骨は、けんだまの玉、肩甲骨側の骨は、けんだまのお皿のような形状になっています。 丁度、お皿(肩甲骨側)に玉(腕側・上腕骨骨頭)がはまったイメージで、お皿の中のボールが自由に回転して動くところをイメージしながら動くと効果的です。

(肩関節のイメージ。ちょうどけんだまのお皿に納まるような感じで繫がっています)

 同じように、次に肩峰の下のあたりから、上に向かって、同じようにニコニコタッチしていきます。

 セルフケアも同様です。

 ニコニコタッチした後では、肩が後ろに反るようになり、自然に胸がひろがります。むりなく美しい姿勢をとれるようになります。衣服の皺もできにくく、綺麗な状態を維持できます。

 ↓

 また胸が、広がった分だけ酸素の量も多くなりますので、脳に酸素が取り込まれやすくなり頭もまわり、穏やかになってきます。

 最近IT系企業では、マインドフルネスがキーワードになっていますが、ゆがみのある状態で、無理に良い姿勢をとろうとしても、姿勢を維持するのが辛く効果も薄くなります。 体が柔らかく、歪の少ない状態をニコニコタッチで取り戻すことで、マインドフルネスの効果を高めることもできます。

 肩関節の可動性を良くすることは、

  • 生涯現役の健康力。

  • 若々しい姿勢と、美しさ。

  • 酸素タップリなイキイキした脳。

  • マインドフルネスな状態を創出。

を可能にします。ぜひともお試しくさだい。次回は、上腕部のニコニコタッチについてご紹介したいと思います。

【講座情報】

○朝日カルチャーセンター(河野智聖 直接指導)

○セルフケアでのニコニコタッチ(初心者歓迎 指導担当・トダタカオ) 

(第八回 了)

--profile--​

著者●動体学創始者 河野智聖(Chisei Kono)

整体・古武術・ヨガの研究から、新しい身体理論「動体学」を編纂。東京に動体学研究所を設置、“智聖整体Life”として東京・大阪・神戸を拠点に、日本全国で講座を開いている。

動体学研究所から開発された技術は、ニコニコタッチ®・快気法・心道(整体武術)・スパイナルトーン(音の整体)・マグネティック タオ(体のNS極を磁石で調整)・チセットヨーガなどは“チセイメソッド”として発表されている。

著作に『健康になる整体武術』(筑摩書房)、『生命力を高める身体操作術』(経済界)、『日本人力』『能に観る日本人力』(ともにBAB出版)、『身心を拓く整体』『緊急時の整体ハンドブック』(ともにちくま文庫)などがある。

ニコニコタッチセラピーの講座などのはこちらからご覧ください。

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