『キャッチ アズ キャッチ キャン入門』出版記念集中連載 鈴木秀樹の『エクレアと人間風車』第一回
来る1月19日より日貿出版社より『ビル・ロビンソン伝 キャッチ アズ キャッチ キャン入門』を上梓する現役プロレスラーの鈴木秀樹さん。鈴木さんは“人間風車”の異名を持つ、名レスラー・ビルロビンソン氏より、キャッチ アズ キャッチ キャン(以下、CACC)と呼ばれる、プロレスの源流ともいえるレスリングを学び、現在フリーのレスラーとして、様々な団体で活躍しています。
そこでコ2【kotsu】では、『キャッチ アズ キャッチ キャン入門』の出版記念集中連載として、鈴木さんにビル・ロビンソン氏とCACCについてお話しを伺いました。
第一回目の今回は、伝説的な存在「蛇の穴」ことビリー・ライレー・ジムからお話しが始まります。
『エクレアと人間風車』
第一回 僕の師匠、ビル・ロビンソン
語り●鈴木秀樹
構成●コ2【kotsu】編集部
デビュー前のビル・ロビンソン
僕にキャッチ アズ キャッチ キャン(以下CACC)を教えてくれたビル・ロビンソンは若かりしころ、ビリー・ライレー・ジムでCACCの練習をしてました。
今となっては伝説的なジムですが、ロビンソンに聞いたことがあるんです。「どんなジムだったんですか?」って。すると笑って「ジムって言っても、ただの小屋だぞ」と。
トタンの。ペラペラのシートみたいなマットが敷いてあって、2組も練習したら他の人は何もできないくらいの狭さ。だから大勢いる時はジムの前の芝生でやったって言ってましたよ。だから終わると芝生でこすれて痒かったそうです(笑) 今あるような格闘技のジムに比べたら全然悪い環境ですね。
YouTubeにビリー・ライレーが帽子をかぶってスーツ姿で教えてる動画がありますよ(https://www.youtube.com/watch?v=wqq_LWudBek)。
ジムに来た生徒達が玄関にいるライレーに授業料を渡したりしてます(動画1分50秒付近)。詳しい値段は分かりませんけど、映像で見る限りは教え方はロビンソンと同じですよね。まず、とにかくしつこい。それとガッといかなきゃいけない時ってあるじゃないですか。よく「エクスプロージョン(爆発)!」と言われましたけど、押さえ込みなら押さえ切る、投げるなら投げ切るというキワのところ。そこで大声を出して指導するのは似てるな、と。
ロビンソンは、CACCの他にも高校だか中学だかの時、YMCAでフリースタイルのアマチュアレスリングも少しやったと言ってましたね。マンチェスター出身なんですが、地元にはアマチュアレスリングといっても、いくつかスタイルがあったらしくて。
イギリス全土でグレコローマンの他に、大きく分けて4個のローカルなレスリングスタイルがあったそうで、「カンバーランド・ウエストモーランド・スタイル」(スコットランドの山岳地帯で盛んになった互いにクラッチした状態でスタートするレスリング)、「コーニッシュ・スタイル」(上半身にジャケットを着用する日本の柔道に似たレスリング)、「デボンジャー・スタイル」(英国南西部のデボンで古くからあるスタイル。組み合う過程で相手の下半身を蹴ることが認められる)そして、最もシンプルでピンフォールの他にサブミッションで相手を降参させる「ランカシャー・スタイル」、つまりCACCですね。
クラッチしたまま倒し合うものは、手を離しても負けで、これは練習でもやりましたよ。どうしても倒す時に手を離しちゃうんですけど。でもおかげでクラッチしたまま投げる技術は上手くなりましたね。握力も強くなりますし。あとYMCAではレスリングの他に、ラグビーもかなり好きでやっていたみたいですね。「コンディショントレーニングとしていいぞ」と言ってましたし、スーパーボウルとかを見るのも好きでした。日本にいた時も、ラグビーや相撲観戦に行ってましたよ。
それとボクシング。お父さんがハリー・ロビンソンというリングネームで地元のチャンピオンだったそうです。そのお父さんのことを尊敬して始めたらしいです。でもロビンソンが青果店でバイトをしている時に、近くで遊んでた友達の投げたブリキの看板が目に当たって、後遺症の残る怪我をしちゃったんです。それで「ボクシングは諦めろ」とお父さんに説得されたこともあって、同時期に始めたレスリングをやることにしたそうです。レスリングなら掴めばなんとかなるじゃないですか。
ロビンソンは15歳でレスリングを始めて、19歳でプロデビューしています。
最初はオリンピックを目指してたそうですが、当時のオリンピックは今ほど派手じゃなかったんですよね。金メダルをとっても何かあるわけじゃないし。ビリー・ライレーや他の人たちからも「プロにならなきゃダメだ。オリンピックなんか出たってお金にならない」と諭されてプロに転向したらしいです。
その時期に数試合、マスクマンをやったことがあるらしいですよ。リングネームは「ブラウン・オウル」。プロのリングに上がり始めた頃、まだアマチュアの試合も残ってて、本来なら並行して出られなかったんですよね。だからマスクで顔を隠したんです。
そんなことが自伝に書いてあったんでロビンソン本人に、「どんなデザインのマスクだったんですか?」と聞いたんです。そしたら「マスクって言っても、布を被っただけだぞ」と言ってました。「今のマスクみたいにちゃんとしてないよ」って(笑)。試合中に脱げないようにした茶色い布をかぶっただけだったそうです。その試合の映像があったら面白いんですけどね。
ロビンソンがプロでやってた試合は主にラウンド制です。でも場所によって違ったらしいです。30分一本だったり、5分6ラウンドや3分10ラウンドもあったそうです。もしかしたらこの辺はボクシングの試合から来ているのかも知れませんね。
(第一回 了)
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鈴木秀樹さんの初の著書『ビル・ロビンソン伝 キャッチ アズ キャッチ キャン入門』が、来る2017年1月19日に発売されます。現在Amazonで予約受付中です。
『キャッチ アズ キャッチ キャン入門』
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開催場所●グランデ(神保町) 7F 発券場所 / 発券日時●グランデ(神保町) B1F/2016年12月25日(日) 10時~ 【店頭受付】2016年12月25日(日)10:00~ 【電話受付】2016年12月25日(日)13:00~ TEL:03-3295-0017(直通)
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●第1部 16時〜18時 基本〜テイクダウン ●第2部 18時30分〜20時30分 ブレイクダウン 20時30分〜21時 サイン会&ツーショット撮影会
参加費:通常価格 1コマのみ4,000円 2コマ通し7,000円 「キャッチアズキャッチキャン入門」を当日購入もしくはオビをご持参の方 1コマのみ3,000円 2コマ通し5,000円
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--Profile--
鈴木 秀樹(Hideki Suzuki)
すずき・ひでき/本名同じ。1980年2月28日生まれ、北海道北広島市出身。生まれつき右目が見えないというハンディを抱えていたが、小学生時代は柔道を学ぶ。中学時代にテレビで見ていたプロレス中継で武藤敬司に魅了され、プロレスの虜になる。専門学校卒業後、上京。東京・中野郵便局に勤務。2004年よりUWFスネークピットジャパンに通うようになり、恩師ビル・ロビンソンに出会う。キャッチ・アズ・キャッチ・キャンを学び、2008年11月24日、アントニオ猪木率いるIGF愛知県体育館大会の金原弘光戦でデビュー。2014年よりフリーに転向。ZERO1やWRESTLE-1、大日本プロレスなどを中心に活躍。191センチ、115キロ。