02.ヒモで寝たきりの子供の呼吸量が上がった!
—実際に先生の授業ではどのように「ヒモトレ」を使われているのでしょう?
藤田 本に書いてあったことはもちろんですが、講習会で伺った胸に巻く方法も使っています。
—胸というのは確かに本の中ではなかったですね。どんな効果があるのでしょう?
藤田 側湾や寝たきりなどで胸が潰れて呼吸がしづらい子供がいるのですが、そうした子供の肋骨に合わせてヒモを巻いてあげると呼吸が楽になるんです。発想としては小関先生が本の中で書いている、「酒屋さんなどがしている前たれは腰痛予防になっている。」というものに近くて、講習会で先生からも「息を吸ったところで痛いところにヒモを締めて、あとは呼吸に任せなさい。」と聞いていたので試してみたんです。
—実際に試してみてどうでしたか?
藤田 潰れている胸がすぐに元に戻るようなことはないのですが、少し胸に膨らみが出て呼吸が大きくなったんです。昨日も卒業生の一人がお母さんと一緒に学校に寄ってくれたので、「今こんなヒモを試しているんだよ。」と試してもらったところです。その子供は人工呼吸器をつけているのでどのくらい呼吸が出来ているかが数字ですぐに分かるんですが、ヒモを試してもらって数字を見たお母さんが「普段は200ミリリットル前後なのに、久しぶりに300ミリリットルっていう数字を見ました!」と驚かれていました。ですから数値的にも効果が現れていますね。
—それは現場ならではの発見ですね。その他にもそうした効果はあるのでしょうか?
藤田 はい。脳性麻痺で座るのが苦手な子供にヒモトレとボード(注 小関先生が開発した〝こころのバランスボード〟)を試してもらったところ、姿勢が良くなり、立位や歩行の姿勢がしっかりします。
—実際に写真を拝見するとヒモの使い方も色々試されているようですね。
藤田 脚ヒモやたすき掛けなど色々試しています。たすき掛けをすると肩から力が抜けますね。
—普通に考えるとヒモで身体を締めることを嫌がる気がするのですが?
藤田 それがないんですね。効果については「分からない」という子供も当然いますけど、ヒモが「嫌だ」という子供はいません。
—そうなんですか。やはりヒモで身体を締めるということを窮屈に感じて違和感を持つ子供がいるだろうと思っていたので意外です。
藤田 これまでのように〝かちっと止める〟ということだとやはり嫌がる子供が出てきたと思うのですが、そうではなくて〝動く〟というところが良いのだと思います。その結果、小関先生が仰っているように、「使い過ぎている、働き過ぎているところを抑えて、逆に使っていないところを働かせることで全体のバランスが整う。」ということなんだと思っています。ですから動かせる体の右側が、動かない左側を引っ張ってくれるということが起きて、その中で知らず知らずのうちに自分でバランスを取っているんでしょうね。
—実際に脳性麻痺などで体を捻っているお子さんがヒモを使うことで姿勢が整うのは凄いですね。正直、写真などで姿勢が整っているのを見せて頂いても〝これはこれで窮屈なのではないのだろうか?〟と思っていたのでビックリしています。
藤田 そうなんですね、これは私も意外でした。最初は私も〝どうかな?〟という感じだったのですが、実際にヒモを使ってみると普段凄く緊張が入ってしまう子供から徐々に緊張が抜けていって、「はぁ〜」と肩も下りてくるので驚きました。まだヒモを取ると元に戻ってしまうのでそこが課題ですね。ただ慣れた子供は「先生、またヒモを結んで!」と自分から言ってきますので、やはりヒモをつけていることが楽なんだと思います。
—それはお子さんだからということではないのでしょうか?
藤田 年齢とは関係ないようですね。30歳を過ぎた卒業生で体がガチガチに固かった生徒に家でたすき掛けを試してもらったら、「胸が開いて楽だ。」と言われました。マッサージをする人や通っている病院のPT(理学療法士)さんにも「体が柔らかくなったね!」と驚かれたそうです。もちろんまだまだデータ的には分からないところがあるのですが、以前に比べれば非常に体が柔らかくなっていますので、効果があるのは間違いないですね。
上の写真が何もつけていない状態。
下の写真はヒモを脚に巻く「脚ヒモ」と心のバランスボードを使っている状態。姿勢の違いは一目瞭然。
※写真は保護者のご許可の上で使用しています。