07.今後「ヒモトレ」に期待すること
—これから「ヒモトレ」に期待することはどんなことでしょう?
藤田 自分なりにもっと理解して周りの先生や人にも伝えていきたいですね。もちろんこれまでにもお話してきたように、効果のあるなしはケースバイケースですので必ず効果があるというものではありませんし、やはり学校で行うことになるとエビデンス(根拠)が求められることが多いので、その辺りがより分かってくると良いですね。
—確かにそうですね。ただエビデンスがすぐに明快になるかと言えばかなり難しいかもしれませんね。
藤田 ええ。ですからオリンピックの選手のような人が「ヒモトレでメダルが取れました!」と言ってくれると助かるんですけどね(笑)。
—ああ、それは確かにそうかもしれません(笑)。その為にはもっと広めないといけませんね。
藤田 そこはこちらが期待しています(笑)。
—同時並行で先生のような現場での実践の積み重ねも重要ですね。
藤田 僕たちはやはり毎日児童生徒に接していますから、そこで役に立つことであれば「ヒモトレ」を含めてなんでも試していきたいと思っています。もちろん親御さんのご許可や児童生徒の反応を見ながらというのは当然ですが、日々成長している児童生徒が目の前にいますのでそこは切実なところです。「ヒモトレ」に関しては使うことで確実に変わっていくことがありますので本当に期待しています。特にシンプルで「大体こんな感じ」というレベルでも試せることが魅力ですね。
—確かにそうですね。
藤田 もちろんしっかりした知識を持った専門の先生でなければできないことが沢山ありますし、そうした部分は大事です。ただ現実にここにいる生徒は、いつか卒業していきますので、その時に自宅で簡単に続けられることはとても大事なんです。
—卒業後のことも考えないといけないんですね。
藤田 ええ、実際卒業後に悪くなる生徒さんも少なくないですから。またどうしても面倒をみる親御さんもお歳を召してくると負担が大きくなりますので、そうしたところも考えると、生徒はもちろんその周囲の人も楽で負担のない方法が必要ですので、「ヒモトレ」のような簡単なものはとても助かります。
—「ヒモトレ」に限らずそうした簡単で効果が見込めるものが必要なのですね。
藤田 やっぱり僕自身が直接関われる時間というのはそれほど長くはないと思っていますので、少しでも効果があることであればどんなことでも試してみて、それぞれの子供に合うものを少しでも見つけていきたいですね。「ヒモトレ」については確かに効果がある手応えを感じていますので、より多くの人にまずは「こんなアイデアもあるのか。」というスタンスで構わないので試してもらいたいですね。
—本日はお忙しいところありがとうございました。
(2014年5月23日 聞き手 シモムラアツオ)
藤田 五郎 Goro Fujita
所属 香川県立善通寺養護学校 高等部 教諭
昭和61年より養護学校の教員となる。
学級担任を経て、平成8年より肢体不自由、病弱の養護学校で自立活動教諭として、小・中・高の児童生徒の自立活動を担当する。
生徒一人一人の実態やニーズに合わせて、課題となる点について運動面からの支援を心がけ、人間関係の形成や自己理解などを中心課題として、運動面と心理面の両面から自立活動の指導に取り組んでいる。
今回お話しを伺った方
【取材を終えて】
多くの人が関心を持つ「健康」は、出版をはじめテレビなどのメディアでも中心的なキーワードです。求める側の要求もちょっとした健康法から非常にシリアスなものまで多種多様で、それに応じてか健康法の方も様々なものが登場しては消えています。これは常に新しいものを提供するメディアの宿命とも言えるのでしょうが、そうした中で、作り手もまたどこかで「健康」という言葉の重さを忘れてしまうことも少なからずあります。
今回お話しを伺った藤田先生は、「健康」という言葉から一番遠い現場で活躍される方でした。それは朗らかな口調で「ヒモトレ」の効果を説明して頂いている中でも、繰り返し「実際に効果があるか、生徒が楽になるのかが大事なんです」と語られたことからもひしひしと感じられ、改めてこの学校が、「卒業まで」という限られた時間の中で、外の世界で生きていくために役立つことをできるだけ多く生徒に持たせようとしていることに気がつかされました。そして「ヒモトレ」がそうした現場で有効な方法として期待されていることを知らされ、ありがたく、また責任を感じた次第です。
「ヒモトレ」については藤田先生のお話しにもありますように、全てに効果があるわけではありません。またヒモを体に結ぶとなぜ緊張が抜けるのか、そのメカニズムについてはまだ分からないことが多いのが実情です。ただ確かに効果が認められるケースもあり、なにより簡単な点が魅力と言え、藤田先生が「あまり難しく考えず、アイデアとしてまず試してもらえると良いですね」と語られるスタンスでトライして頂ければと思います。
実際ヒモトレの可能性は、著者の小関先生自身にも日々発見があり、講習会や本の感想を含めた皆様からの貴重なフィードバックを頂きながら、着実に広がり続けています。ですからお読みの方のなかで藤田先生のように、「こんな風に役に立った」「こんな使い方をしています」ということがありましたら是非お知らせ頂ければと思います。
最後になりましたが藤田先生をはじめ、ご多忙中にもかかわらず快く取材にご協力頂いた養護学校の校長先生、教頭先生をはじめとした関係者の皆様、主旨をご理解頂き写真をご提供してくださった保護者の皆様に改めてお礼を申し上げます。ありがとうございました。