04.まず生活のベースを強くしたい
—現在は「ヒモトレ」を始めてどのくらいなのでしょうか?
藤田 正式に始めたのが去年(2013年)の暮れですからまだ始めたばかりです。(注 この取材は2014年5月に行われました)本校は小学生から高校生まで120名の児童生徒が学習しています。私はほぼ全部のクラスに最低週一回は授業に入っていますので少しずつそのなかで浸透させていきたいと思っています。
—一日中ヒモをつけている生徒もいるのでしょうか?
藤田 やっぱり一日中つけるということがまだできていなくて、私が担当して指導できるのが週に1〜2回の自立活動(注 ここでいう自立活動とは、生徒の健康面、心理面、人間関係など総合的な部分を対象にした、生活全般に関するベース作りを目的とした授業のことを指します)の時間ですのでまだまだ難しいですね。効果があって、つけて調子の良い子については普段の授業でもつけてもらったりしていますが、まだまだこれからです。ただ、実際に効果のある場面を写真に撮って関係者に見せると全然姿勢が違うので驚かれますね。ですから本校に限らずできるだけ多くの先生に見て頂きたいというのが本音です。
—自立活動の時間以外にも使えるようになると良いですね。
藤田 ええ、発達障害の生徒はやっぱり落ち着きがなくて絶えず体のどこかを動かしていることが多いのですが、ヒモをヒザに巻くとスッと姿勢が良くなって座れるようになる。そうなると勉強にも向かいやすくなりますので、自立活動の時間だけではなくて国語や数学といった教科の中でも試していければと考えています。そういうところまで「ヒモトレ」を持っていければと思っています。
—そこは今後に期待ですね。
藤田 あと空間認知が難しい子供達が沢山いて、そうしたお子さんは立ったり歩いたりはもちろんなのですが、授業で使う図形などもよく分からないんですね。ですから物理的な距離感はもちろん心理的な距離感も取りづらい子供が多いんです。
—その二つは関連しているのですね。
藤田 ええ、特に発達障害など外見上は普通に見える子供でも、そうした距離感に独特なものをもっていたり、外部からの刺激に過敏だったりするケースがあるんです。ですからまずベースになっている体をつくってあげることが大事で、それがないと教科の授業の質も上がりませんから。
—一般教科をより効果的に受けるためにも、まず体が大事なわけですね。
藤田 そうですね。
こちらも先のケースと同様に下の写真は「脚ヒモ」と心のバランスボードを使っている状態。窮屈そうではなく、しっかり腰が立ち、地面を踏めているのがよく分かる。
※写真は保護者のご許可の上で使用しています。