03.親御さんや先生も一緒にトライしています
—脚に巻く脚ヒモなどはどうでしょうか?
藤田 どうしても座った時に脚が開いてしまう子供が多いので、このヒモで留まってくれれば良いな、と思って脚ヒモを試してみたら、脚が閉じるだけではなくて、お尻と腰に力が入って、伸びにくい背骨も伸びて姿勢が良くなったんですね。また脚の裏でしっかり床を踏めたのにビックリしました。
—それは?
藤田 どうしても普段しっかり立てたことがないお子さんが多いので、床をしっかり踏むということ自体が珍しいんです。ところがヒモを一本ヒザのところに巻いているだけなのに、脚で床を踏めるし腰に力が入って、普段は丸くなっていた背中が伸びて綺麗な姿勢になったので驚きました。
—思った以上に明確に効果があったんですね。
藤田 ええ。また基本的には簡単なので他の先生に説明する時にも「この場所に巻くといいですよ。」という風に説明ができるので楽なんですね。簡単に説明できるということは多くの先生が試せて、より多くの生徒が経験できるわけですから広がりやすいわけです。そうしたこともあって周りの先生の中にも取り組んでくれる方が出てきています。また寝たままでも脚が開いたりする子供には姿勢の補助としてヒモを使ったりしています。ただ僕もまだ試行錯誤の最中ですので伝え切れていない部分があるので、これから研究を重ねてちょっとずつ他の先生にも研修などを通じて伝えていきたいと思っています。ですから今は他の先生にまずヒモを体験をしてもらっているところですね。
—反応はいかがですか?
藤田 腰が痛いという先生から「言われる通り腰に巻いて寝たら、全然痛みがなくなって朝スッキリ起きられました。」とか、たすき掛けをして方からは「肩が上がるようになった!」という反応があります。また地域の勉強会などでは、保護者の方にも紹介をしています。
—親御さんにも紹介されているんですか。
藤田 やっぱり自分で体験してから子供にも試させたいと考える方が多いんです。
—こちらの反応はいかがでしょう?
藤田 「痛くない。」とか「楽になった。」という反応を頂いています。学校で行うことですから、保護者の同意なしにお子さんにヒモを巻いたりしたら問題になりますので、しっかり説明をして実際に保護者の方にも体験をしてもらってから採り入れるようにしています。
—生徒さんには「このヒモはこうして使うものだよ」という説明をしてからつけているのでしょうか?
藤田 本校の場合は知的な障がいがある子供もいますので、重度で寝たきりの子供の場合は保護者の方の同意を頂いて行っています。知的な障がいがないお子さんについては「こうやってヒモを締めると動きやすくなったり、痛いところが良くなったりするから試してみよう」と説明して、まず先に僕自身がヒモをつけて「こうやって巻くと先生は腰が楽なんや。」と見せてから行ってます。ヒモを結ぶ時にも「痛かったら言ってな、痛いと効果がないからな。」と安心をさせて、細かく様子を見ながら試しています。もちろん「う〜ん分からん。」ということもありますし「なんか歩きやすい。」というものもあって、そこは色々ですね。本校では人工呼吸器がついた最重度の子供から、見た目では分からない発達障害の子供まで学習していますから、それぞれに合った方法で広げていきたいと思っています。
—それぞれの状態で「ヒモトレ」をおこなう際のキーワードである〝いい塩梅〟、力を入れすぎず抜きすぎないという微妙な感覚を生かした上で試しているわけですね。
藤田 そうですね。決して無理強いはしていませんので効かなかったらすぐ止めるようにして、「もしかしたら変わるかもしれないね。」という感じで試していますね。
—そのくらいのスタンスの方が良いかもしれませんね。
藤田 やっぱり学校の先生が言うことですので、ともすると〝しなければならない〟〝効果がなければならない〟という風に聞こえてしまうこともあるので、そうならないように配慮は大事ですから。
—微妙な体の感覚の問題ですので言い方を間違えると本人の意志と関係なく「そうなのかなぁ」と強制的になってしまうので、その辺りは大事ですね。
藤田 ええ、そうなんです。ですから「分からない。」というのも間違いではないので、「分からないならそれだけ元気なんや。」という感じでやっていますね。
—小関先生が本や講習会でお話しされているのは〝こうである〟〝これが正解〟ということではなく、〝こうかな?〟というようなグレーゾーンの閾値の中で〝自分の感覚を自発的に感じることが大事なんだよ〟ということだと思いますので、今、藤田先生がお話しになっているアプローチはそこにとても忠実ですね。これまでもヒモを使うということではあったということですから、同じヒモでもそのアプローチの違いが全く違う効果を導き出しているんでしょうね。
藤田 そうですね。ヒモもバランス・ボードも私がこの世界に入った時にはもうあったものなので、やっぱり〝使い方〟、〝使う側〟の問題なんですね。バランス・ボードもそうですけど〝全身を協調して使う〟というところがポイントだと思います。特に本校の生徒のように全身を協調して使うことが難しい、部分部分でしか使えない子供にはとても面白いアプローチで、これまで僕自身が学んで来たものをより効果的に使うためのアイテム、アイデアになっています。